女性の骨盤ケア③
今回は3つ目として『妊娠に伴って生ずる産褥期のマイナートラブルである尿失禁や腰痛』についてお話したいと思います。
3.産褥期のマイナートラブル
1)腹圧性尿失禁のケア
産後の女性が尿失禁を経験する割合は30~50%と見られ、見逃すことができません。
助産師が主体的に行える腹圧性尿失禁のケアのうち主なものに
①骨盤底筋訓練(骨盤底筋体操)
②腹圧をかけない日常生活動作の指導があります。
①基本の骨盤底筋体操
A.基本の骨盤底筋体操の姿勢(aのイラスト)
上を向いて寝たら、両膝を立てます。手の平は上にして伸ばします。
腰が浮かないよう踵を踏ん張るように力を入れ、腰を床に軽く押し付けるようにする。
できるだけリラックスして背中全体が床につくような姿勢を作ります。
骨盤底筋を軽く「キュッ」と締める。腹式呼吸の前に体にスイッチを入れるイメージで軽く締める。
(尿を止めるように、膣を締めるようなイメージ)
どうして子宮はこのような変化が可能なのでしょうか?
B.ハーフブリッジの姿勢
腹部をへこませながら、骨盤底筋を持ち上げるようにイメージしながらゆっくりと口を軽く横に広げるように開き、
「ハ~」と息を長く吐く(bのイラスト)。
a,bの姿勢ができれば、負荷をかけて、腰を上げた状態で腹式呼吸を行う。
私はフラダンスやタヒチアンダンスを習っていた頃、先生から基本姿勢を取る時に下腹部を引き締めるイメージが分からない方は『電車のつり革を両手で持ち、膝を少し落とすと胸部が上がり、下腹部に力を入れやすくなります』と教えてもらいました。
電車の中でも骨盤底筋体操(尿を止めるように、膣を締めるように)を心掛けています。
②腹圧をかけない日常生活動作
実際に日常生活の中で腹圧がかかりやすい場面には、下記のような場面があります。
・重いものを持つ(子供を抱っこする、布団の上げ下ろしなど。)
日常生活については、子供を抱っこするのが一番しんどいかな?
私はできるだけ前抱きよりも、おんぶをすることのほうが楽です。
人の好みもありますが、昔から山歩きでザッグを担いでいたので、たくましい肩と腰骨があります。
布団の上げ下ろしを行っているご家庭もあると思いますが、
毎日なので自分の胸より高い位置まで持ち上げる動作はしんどいものがあります。
その点、ベッドは楽ですね。
齢を重ねると本当に身に沁みます。力のある男性にしてもらえると有り難いことです。
私は、この言いつけをしっかりと守っていたのですが・・・・
・咳、くしゃみ
突然にやってくるものです。このような症状が出やすいときは吸水パットがありますので、
量を考えて選択するといいのかもしれません。
現在、高齢者の尿漏れ対策で多くの製品があります。
購入時少し恥ずかしいことがあるかもしれませんが、あまり気にされることはありません。
高齢になると身体のあちこちが緩んでくるようです。
・排泄時
排尿時の場面で腹圧をかけない具体的な方法は、背中を伸ばし、骨盤を立てた良い姿勢をとり
骨盤底筋体操と同様に腹部をへこませて腹式呼吸で息を吐きます。
いかがでしょうか?
座位での腹圧を掛けない姿勢はなかなか難しいですね。便器の高さが微妙に関係します。
常日頃トイレに駆け込むのではなく、少し余裕を持っていく習慣があればいいのですが中々難しいですね。
外出時にはトイレを気にせずにと思うと薄手の吸水パットを使用していると安心です。
また、産後の授乳のため、便秘になる方も多いようです。水分補給をしても追いつかない場合は、
ホームドクターに相談し、排便のコントロールをすると楽になります。
2)腰 痛
妊娠や出産に伴う腰痛や恥骨部の痛みなどの原因は、妊娠時のホルモンの働きによるものと
姿勢によるものと考えられています。
出産時は、赤ちゃんが通ることが出来るような産道にするために、
女性ホルモンの影響により骨盤が緩みやすくなっています。
産後、骨盤の緩みをそのままにしておくと、体の歪みなどに繋がる可能性があります。
骨盤の緩みを締めることは産後の身体を整えることとなり、重要になります。
産褥期の腰痛発生率は50~60%という報告があります。
場合によっては、それらが原因で日常生活に影響を及ぼす可能性があります。
腰痛は多くの方が抱える悩みですが、産後のお母さんも例外ではありません。
妊娠や出産をきっかけに腰痛が発症し、そのまま慢性化してしまうことも特徴です。
産後の腰痛の原因は「姿勢性腰痛」と「骨盤輪不安定腰痛」の2種類あります。
「姿勢性腰痛」は、お腹が大きくなり身体の重心が変化することによって、
一方で「骨盤輪不安定腰痛」は女性ホルモン(プロゲステロン)が出産に向けて
骨盤輪の靭帯を緩ませることにより起こります。
【対処法】
1.安静療法:腹帯、コルセット、骨盤ベルトの着用
2.運動療法:腰痛体操、産褥体操(骨盤底筋体操を含む)腰痛や恥骨部痛の痛みには
骨盤ベルトが有効である報告があります。
3.温熱療法:ホットパックとも言い、産婦人科領域では昔から腹部全体を温めるようにしています。
リハビリでも活用されていますね。最近では、適温(40℃)で長時間(8時間)腰やおなか等を覆えるぐらいの
大きさの製品が開発されており、便利な世の中になりました。
以上、産褥期のマイナートラブルについて、助産師の立場からの指導ですので限界があります。
お困りの場合は、産科のホームドクターにご相談ください。
女性の長いライフスタイルを整えるには骨盤からといいても過言ではございません。
骨盤を制するものは、女性の豊かな人生を制する。