口腔ケアについて(感染予防の観点から)
1.口腔ケアについて
今回は、感染予防の観点から口腔ケアについてお話しします。
口腔ケアの目的は、口腔内を清潔に保つことだけでなく、感染予防や口腔機能の維持と向上を図ることです。
口腔内にはカンジダ菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、肺炎桿菌、インフルエンザ菌など多くの細菌が含まれています。
口腔内の清潔がおろそかになると、細菌が血管を通って身体全体を巡り、各臓器に侵入・繁殖して、動脈硬化、心筋梗塞、糖尿病、誤嚥性肺炎等さまざまな病気の原因になります。
口腔ケアを適切に行い、感染予防はもちろん様々な病気を引き起こさないように気をつけましょう。
口腔ケアで予防できること
口腔ケアで予防できることとして、人工呼吸器関連肺炎や誤嚥性肺炎、虫歯、ドライマウスなどがあります。
介護施設や高齢者施設などでは、誤嚥性肺炎・虫歯・ドライマウスなどを予防のため口腔ケアは重要です。
ご高齢の方は唾液の分泌量が減り、細菌が定着しやすくなります。
そして、嚥下機能が低下している場合、唾液を誤って飲み込み 誤嚥性肺炎を引き起こす危険が高くなります。
2020年の死因割合では、第一位は悪性新生物ですが、第5位に肺炎 第6位に誤嚥性肺炎となっています。
これを65歳以上の高齢者の年齢別でみると、どの年齢においでも、肺炎が2位・3位・4位と高い順位になっています。
ご高齢の方は、誤嚥による肺炎を引き起こす危険が高いため、口腔内を清潔に保つことが大切です。
現在は、様々な口腔ケア製品が日本でも発売されています。
どのくらいの頻度でケアすればよいの?
一般社団法人 日本クリティカルケア看護学会 口腔ケア委員会 が、2021年2月に出している「気管挿管患者の口腔ケア実践ガイド」によると、
と記載されていました。
皆様のご施設ではどのように口腔ケアを実施されていますでしょうか?
肺炎予防のための口腔ケアを人工呼吸器装着患者だけでなく、介助を必要とする患者の口腔ケアも見直してみると良いのではないかと思います。
2.口腔ケアの注意事項4つ
それでは、これから口腔ケア時の注意事項の中から、
①防護用具の着用
②口腔ケア時の体位
③口腔ケア製品
④入れ歯の手入れと歯ブラシの管理方法
この4項目についてお話をします。
① 防護用具の着用
マスク・手袋・エプロンは着用されていると思いますが、眼球粘膜を飛散物から守るための防護用具であるシールド付きマスクやゴーグル・フェイスシールドを使用しているご施設は少ないのではないでしょうか?
感染制御研究会が実施している針刺し・体液曝露サーベイランスの結果では、最も曝露している部位は眼球粘膜です。
口腔ケア時には眼に見えない口腔内の分泌物が飛散しています。患者がむせると、さらに分泌物が飛散し、眼の粘膜に湿性生体物質が曝露する危険があります。
そのため、眼の粘膜を守るための防護用具は重要なアイテムです。
新型コロナウイルスの予防策としてゴーグルやフェイスシールド等が使用されるようになりましたが、体液曝露予防として口腔ケア時にも是非、使用していただくことをお勧めします。
体液曝露は、労務災害となります。
自分の身の安全は自で守るしかありません。
② 口腔ケア時の体位について
口腔ケアを行う場合は、誤嚥を予防するために坐位にしましょう。
自力で坐位になれない場合は、ベッドの角度を30度~45度くらいにし、まくらなどで体位を調整します。
それでも、坐位になれない場合は、側臥位にして、顔をしっかりと横に向けて行いましょう。
麻痺がある場合は、麻痺側が上になるようにしてください。
③ 口腔ケア製品の選択について
対象者の口腔内の状態に適したケア製品を使用することで、手入れがしやすく効果的な口腔ケアを行うことができます。
弊社には、口腔ケア製品が揃っていますので、営業担当にお気軽に声をおかけください。
口腔ケア製品の使い方の動画は、弊社YouTubeページ又は製品情報からご視聴できます。
④ 入れ歯の手入れと歯ブラシの管理方法について
入れ歯の手入れが悪いと汚染物がたまり、様々な問題が起きます。
お手入れを忘れないようにしましょう。
歯ブラシは自分専用で使用するため、日常的な洗浄で構いません。
ブラシが乾燥するように、ブラシを上にして保管してください。
ご施設のラウンドを行うと、ブラシを下向きに保管している場面を見かけることがあります。
これでは歯ブラシが濡れた状態になるため細菌が繁殖してしまいます。
必ずブラシが乾燥するようにブラシは上向き保管しましょう。
他の方のブラシと一緒に保管してはいけません。
感染リスクが高くなりますのでご注意ください。
終わりに
今回は、口腔ケアの重要性についてお話しさせていただきました。
感染管理においても肺炎予防として口腔ケアは重要です。
歯科医師や歯科衛生士と連携して、口腔ケアの質を高めて人工呼吸器関連肺炎の予防や誤嚥性肺炎を予防できると良いですね。
また新型コロナウイルス感染症はまだ継続すると思います。
新型コロナ以外の感染症予防においても、基本的な感染予防である標準予防策と感染経路別予防策は重要です。
換気・ソーシャルディスタンスとともに感染予防の基本を徹底・継続して行いましょう。